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東京地方裁判所 昭和50年(ワ)3842号 判決 1976年10月12日

原告 本間英孝

<ほか六名>

右原告ら訴訟代理人弁護士 松本昌道

同 正田茂雄

同 川名照美

同 岡田弘隆

被告 日本開発株式会社更生管財人

右代表者管財人 山崎久一

右訴訟代理人弁護士 仁分百合人

同 西迪雄

同 吉田豊

主文

一  被告は原告らに対し、別紙物件目録第三記載の建物について東京法務局渋谷出張所昭和四九年六月一七日受付第二〇一〇二号の所有権保存登記の抹消登記手続をせよ。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  請求の趣旨

(一)  被告は原告らに対し、別紙物件目録第二及び第三記載の各建物について東京法務局渋谷出張所昭和四九年六月一七日受付第二〇一〇一号、同第二〇一〇二号の各所有権保存登記の抹消登記手続をせよ。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

2  請求の趣旨に対する答弁

(一)  原告らの請求を棄却する。

(二)  訴訟費用は原告らの負担とする。

二  当事者の主張

1  請求原因

(一)  別紙物件目録第一記載の建物(以下、本件建物という。)は、通称「目黒コーポラス」という七階建のビルディングで、その中に区分所有権の対象となる六五戸を包含するものである。

(二)  原告らは日本開発株式会社から分譲を受けた右六五戸の全区分所有者の一部の者で、全区分所有者から選任された本件建物の管理者であり、被告は本件建物を分譲した右会社(昭和四九年一〇月二二日、東京地方裁判所において更生手続開始決定を受け更生会社となる。)の更生管財人である。

(三)  別紙物件目録第二記載の建物部分(以下、本件車庫という。)及び同目録第三記載の建物部分(以下、本件倉庫という。)は、次に述べるところにより明らかなようにいずれも本件建物の一部であって、建物の区分所有等に関する法律第三条一項にいう「建物の部分」に該当する本件建物の共有部分であるから、原告らを含む本件建物の全区分所有者の共有に属するものである。

(1) 本件車庫は、本件建物一階のロビーからみて左側に位置し、車庫として利用されているが、本件建物の敷地から直接入庫でき、その入口には他から隔離する設備は何ら存在しない。したがって構造上の独立性を有せず区分所有の対象とならないものである。

(2) 本件倉庫は、本件車庫の裏側に位置し、倉庫として利用されているが、その左側にはポンプ室、電気室が並んで存在し、本件倉庫の内側には、本件建物の各専用部分に送る電気、水道、ガス、空調等の管がはりめぐらされ、それらの配管はすべて露出して設置されており、更に、各専用部分の元スイッチ及び共用部分への各スイッチ、電気メーター、ヒューズ等が設置されている。したがって利用上の独立性を有せず、区分所有の対象とはならないものである。

(四)  日本開発株式会社は本件車庫及び同倉庫につき東京法務局渋谷出張所昭和四九年六月一七日受付第二〇一〇一号及び同第二〇一〇二号の各所有権保存登記を経由している。

(五)  よって原告らは被告に対し、右各保存登記の抹消登記手続を求める。

2  請求原因に対する認否

(一)及び(二)は認める。

(三)のうち(1)の本件車庫が原告ら主張の位置に存在し、車庫として利用されていること、(2)の本件倉庫が原告ら主張の位置に存在し、倉庫として利用されていることは認めるがその余は否認する。

(四)は認める。

三  証拠≪省略≫

理由

一  本件建物が区分所有の対象となる六五戸を包含する通称「目黒コーポラス」という七階建のビルディングであり、原告らが日本開発株式会社から分譲をうけた右六五戸の全区分所有者から選任された本件建物の管理者であること、被告が右会社の更生管財人であること、本件車庫及び同倉庫が本件建物の一部であること並びに右車庫及び倉庫について原告主張の各所有権保存登記がなされていることは当事者間に争いがない。

二  そこで本件車庫及び同倉庫が区分所有の対象となるか否かについて判断する。

1  車庫について

≪証拠省略≫によると次の事実が認められる。

本件車庫は本件建物の一階正面ロビーから向って左側の一階部分に位置しているが、右車庫の左側の壁は本件建物の外壁になっており、向って右側の壁は車庫の入口の柱の部分から約三分の一は本件建物の外壁で、残りの部分はロビーと境を接する内壁となっているが、その壁は巾約二七・六センチメートルのブロックでできている。そして車庫の奥は本件倉庫との間の通路部分及び電気室と接しているが、その部分はブロックの壁で遮られ、右通路及び電気室に通じる巾と高さがそれぞれ約二メートルの二ヶ所の入口があるが、右の入口には引戸式の鉄製の扉(厚さは通路に通ずる部分のものは約二〇センチメートル、電気室に通ずる部分のものは約五・五センチメートル)がとりつけられている。また車庫の入口には両側の壁に接してそれぞれ本件建物を支える七階まで通しの鉄筋コンクリートの柱(約七〇センチメートル角)があり、右の柱と柱の間に等間隔をおいて右と同様の柱が三本立っている。右の各柱には車輛の出入を遮断するために上下できる長さ約二・四メートルの鉄パイプがとりつけてある。右認定に反する証拠はない。

以上認定によれば本件車庫はその周囲三面をブロックの壁で仕切ってあって、本件建物の他の部分と明確に区分されており、本件建物の敷地部分への出入口のみが扉又はシャッター等による仕切りがないが、それは車輛の出入が頻繁に行われる車庫の性質上止むを得ないものであって、右の扉又はシャッター等がなくても車庫入口に並んで立っている前記四本の柱及び天井のひさし部分によって本件車庫部分と本件建物の敷地部分の境界は明確に区分されているとみるべきであり、又、前記鉄パイプによる遮閉装置も右区分の明確性の一助となっていることを考慮すれば、本件車庫は建物の区分所有等に関する法律第一条にいう「構造上区分された部分」に該当するといわねばならない。

更に本件車庫が車庫として利用されていることについては当事者間に争いがなく、又≪証拠省略≫によると本件車庫から直接本件建物の外部に出ることが可能であること及び本件車庫の車輛収容能力は、本件建物の区分所有者の数に比してごく僅かに過ぎずほとんどの区分所有者はこれを利用できないことが認められることよりすれば、本件車庫は前記法律第一条にいう「独立して建物としての用途に供することができるもの」に該当するものといわねばならない。

≪証拠省略≫によると本件車庫の壁の内側附近に臭気抜きの排気管があり、又、入口附近の床に排水のマンホールが三ヶ所あることが認められるが、右の事実は、本件車庫が「利用上の独立性」を有することの妨げとなるものではない。

結局本件車庫は区分所有の対象になると認めるのが相当である。

2  倉庫について

本件倉庫が原告主張の位置にあり、倉庫として利用されていることは当事者間に争いがない。

≪証拠省略≫を総合すると次の事実が認められる。

本件倉庫は、壁及び扉等により区分された本件建物の部分であり、その内部を更にブロックの壁で二個に仕切ってあるが、一階正面のロビーに近い部分(以下第一倉庫という。)の床面積は、他の部分(以下第二倉庫という。)の約四倍である。右各倉庫の内部の大部分は板で小さく仕切られ、(第一倉庫は一四区画、第二倉庫は三区画)本件建物の区分所有者の一部の者の物置に使用されており、各室にはそれぞれ本件建物の共用部分である通路への出入口がある。そして右第一倉庫の床には汚水と雑排水の各マンホールがあり又、右第一倉庫内側の壁には本件建物の共用部分の電気のスイッチ及び積算電力計の配電盤と同じく共用部分の換気、汚水処理及び揚水ポンプ等の動力系統のスイッチがはめ込まれており、本件建物の管理人が右の各スイッチを操作するため、一日三回程右倉庫に出入りしている。更に右第一、第二の各倉庫の天井の高さは約二・八九メートルあるが、床から約二・〇五メートルの高さの部分のいたる所に直径約一五センチメートルから同三センチメートルの大小の電気水道、等のパイプが通っている、右のパイプは区分けされた物置の上の部分は金網で囲われているが、他の部分は露出したままになっている。右認定に反する証拠はない。

以上認定によると本件倉庫は倉庫として利用しているもののその内部には本件建物の管理上必要不可欠な共用部分の電気、水道等を操作するための設備や各種配管等が設置されており、その操作をするために一日に数回も出入りをしなければならないのであるから、建物の区分所有等に関する法律第一条にいう「独立して建物としての用途に供することができるもの」には該当しないといわねばならない。

三  以上認定によると本件倉庫については日本開発株式会社を所有者とする原告ら主張の保存登記は実体に符合しない無効のものであるから、被告は原告らに対し右保存登記の抹消登記手続をする義務があり、本件車庫については、区分所有の対象となりうるものであるから、原告らは被告に対しこれについての保存登記の抹消登記手続を求めることはできないといわねばならない。

四  よって原告らの被告に対する本訴請求は別紙物件目録第三記載の建物について東京法務局渋谷出張所昭和四九年六月一七日受付第二〇一〇二号の所有権保存登記の抹消登記手続を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 比嘉正幸)

<以下省略>

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